幼い頃、私はここではない他の世界に行きたかった。自分が存在する現実の世界とは違うところを、自由自在に飛び回りたかった。
それが不可能だと分かった時、私は夢の世界にそれを求めた。せめて夢の中だけでも自由自在に飛び回って遊びたかった。
それゆえ私は夜寝る前に、私の理想とする夢を見ようと強く望んだ。寝る前には見たい夢を強く思い描き、いい夢を見ることができた日は嬉しくて、起きてからも何度も思い返した。
特に空を飛ぶ夢が理想的な夢だった。そのためか、今でも飛ぶ夢はよく見るし、夢の中で飛ぶのは得意だ。

中高生になり、小説を書くようになってからは物語の世界にそれを求めた。最初に書いた小説は、主人公が夢の世界を彷徨い戦う話。それゆえ唯々楽しかった。
夢の世界は常識や世界の法則からは解放された自由な世界。自分の思い通りにならない世界ではあるけれど、何があってもおかしくない世界。それゆえ私には希望足り得た。

あれから幾年月が流れ、私を構成する情報もあの頃とは全く様変わりした今、夢を見る事を強く望む事はなくなった。夢への憧れを忘れた私が最初に書いた二次創作は夢の世界の話で、それを現実から解放された世界への憧れが私の中に根強く残っていた為とするのはこじつけだろうか。