深夜の当直室にて 詰問END

 
※ギャグ展開・キャラ崩壊注意

 宿直室の中、仁王立ちをする私の目の前の床にザーギンとジョセフが膝を折って座っている。ニホンでいう正座という奴だ。辺りには私が乱入したときに倒した椅子や投げつけた雑誌が散乱している。
 二人とも気まずそうな表情を浮かべ、時折何か言いたそうに私の顔を見上げてくるが、気圧されたように再びすぐに下を向いてしまう。
「………」
「………」
「………」
 重苦しい沈黙が狭い室内を満たしている。二人とも私が乱入した時と同じ格好のままだ。ジョセフは下半身裸のまま、ザーギンは性器だけをズボンの前から出した状態のまま。つまり、二人ともそろいも揃ってコンドームに包まれた性器を露出している情けない姿のままだ。
「…あの、サーシャ?」
「なに」
 最初に沈黙を破ったのは、ザーギンだった。それに応える自分の声が、重く底冷えのする刺々しさを含んでいるのがよく分かる。
「あの、これにはだね、色々と込み入った事情があって…」
「どういう事情なの」
 凍てつくような視線で見下したまま、抑揚をおさえた声で問う。彼はすっかり縮こまったペニスを隠したそうに身を縮めていたが、生憎私にそれを許す気はない。先ほどまでジョセフに咥えさせたり、あまつさえ突っ込もうとしていたぐらいなのだから、今更他人に見られて恥ずかしがることはないのでしょう?
「…最初はその、悪ふざけのつもりだったんだ。じゃれあってる途中でつい、本気になっちゃって。ほら、男同士って、こういうことよくあるから…」
「悪ふざけで三弁式肛門鏡使って肛門拡張したり、聴診器使って乳繰りあったりするわけ!? 男同士の悪ふざけってのは!」
「あ、あの、姉さん…ザーギンだけが悪いわけじゃないんだ。むしろ俺だって…」
 ジョセフが怯えたような声で口を開く。だが私は彼をじろりと一瞥して黙らせ、詰問の矛先を彼に向ける。
「あなたもよ、ジョセフ! どうしてこんな事していたの!?」
「いや、最初の最初はザーギンから誘ってきたんだけどさ、俺だって嫌だったわけじゃなくて、むしろ、その、ザーギンと気持ちいい事するの楽しくて…」
「そんなことを聞いているんじゃないの! 大体、何で椅子なのよ!? 何でわざわざよりによって椅子の上でするわけ!?」
 私の怒鳴り声に、ジョセフが喉の奥から空気の漏れるような妙な音を出して身体を強張らせた。僅かな沈黙の後、遠慮がちにザーギンが口を挟んできた。
「いや、拡張も最初はベッドの上でしてたんだ。普通に身体を横向きにするシムス体位とか、仰向けに寝て膝を抱えてお尻の穴を上に向ける砕石位とか、うつ伏せでお尻を高く上げる膝胸位とかの方がやりやすいし。でも同じ体位ばっかりじゃ飽きてくるだろ? だからちょっと気分変えようと、縛りの要素も入れてみたんだけど…」
「そんな事聞いていないし聞きたくない!
 もういいわ、勝手にしなさい! 二人で医療プレイでも触手プレイでもSMプレイでもしていればいいのよ!」
「あっ、サーシャ…」
「姉さん!? どこいくの!?」
 頭にきた私は、宿直室を飛び出していた。そのままめちゃくちゃに走って病棟を出て、キャンパスを突っ切り、大学構内からも飛び出していた。
 もう何もかもどうでも良かった。もうどうなろうと知るものか。弟も、あの男も、私自身も、世界ももう、どうにでもなるがいい。

Fin?

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