刻印

 
 大学の寮に戻るサーシャと別れた後、ジョセフと一緒に食料を買い出しに行ってから帰途についたので、アパートについた時は夕方になっていた。
 僕の下宿しているアパートは、大学から歩いて十数分のところにあった。四階建てのレンガ造りの建物はかなり古いが結露や乾燥もさほど酷くはなく、かすかな黴臭ささえ我慢できれば中々いい住処だった。
「ちょっと汚いけど、遠慮なく上がって」
「お邪魔します……っと。ここがザーギンの家かー」
 招き入れられたジョセフは物珍しげに辺りを見回していた。教会で大勢の孤児達と一緒に育てられた彼にとっては、普通の家はあまり馴染みの無いものなのかもしれない。
「ちょっと待っててね、部屋を片付けるから。その間に買ってきた食料品を台所にある冷蔵庫に仕舞ってくれないかな」
 リビングのテーブルの上は本や資料が散乱し、床の上には段ボール箱が積み上げられて、椅子の上にまで本が積み上げられていたりで、お世辞にも快適な居住空間と言えるような状態ではなかった。
「うん、分かった」
「終わったら、冷蔵庫にジュースがあったと思うから飲んでいいよ。コップは冷蔵庫の隣の棚にあるから」
 ジョセフに買い物袋を渡すと、僕はリビングの掃除に専念することにした。
「ジョセフ、そっちは終わったかい?」
 ひとまずテーブルの上だけでも何とかスペースが空いた所で、台所にいるはずのジョセフに声をかけた。が、いくら呼んでも返事が返ってこない。



「で、俺はどうすればいいの?」
 ジョセフが興味津々といった表情で聞いてくる。何だかんだで好奇心の方が勝ったらしい。
「僕に万事任せておけば心配ないよ。すぐに気持ちよくなるから。そうだな、ちょっとシャツをめくり上げてくれないかな」
「こう?」
 丁度診察の時のように、ジョセフがシャツを捲り上げると、痩せてはいるがほどよく筋肉がついた胸板と、引き締まった腹筋が現れた。
「男でも乳首は触ると感じるんだよ。人によって差はあるけどね。ジョセフはどうなのかな?」
 ジョセフの胸に両手を伸ばし、両方の乳首を軽く摘む。そのままくにくにとこねくり回してやると、ジョセフがくすぐったそうに身を竦めた。
「あはっ、何これ、くすぐったいよ」
 しかし軽く引っ張ってみたり、指先で押しつぶしてみたりして尚もしつこくこね回し続けていると、次第にジョセフが太腿をもじもじとすり合わせ始めた。
「なんか、変な気持ちになってきたんだけど……」

※続きは本で